桜新町駅周辺の不動産投資市況

活気ある商店街と、落ち着いた雰囲気の戸建が並ぶ住宅街。様々な魅力を併せ持った桜新町駅周辺の投資市況を解説します。


意外性に満ちた「サザエさんの街」

渋谷から東急田園都市線で9分の駅が桜新町駅です。駅前の八重桜は有名で花見時には盛大な桜祭りが毎年開かれています。 桜新町駅周辺の街(以下、桜新町)は、街ガイドたちの間でかねてから「住みたい街ランキングには入っていないが、自分たちが投票すれば間違いなく上位ランク」と言われている街の1つです。 その影響からか、近年は秘かにこの街に注目した不動産デベロッパのマンション開発が進み、世田谷区内で人口流入が増えている街の1つでもあります。
では桜新町にはどのような魅力があるのでしょうか。それは端的には意外性と言えるでしょう。

この街は漫画『サザエさん』の原作者・長谷川町子が住んでいた街としても有名です。
桜新町駅から桜新町一丁目の長谷川町子美術館を結ぶ「桜新町商店街」通りが「サザエさん通り」と名づけられ、通りの至るところにサザエさんのモチーフやモニュメントが飾られており、「サザエさんの街」を印象づけています。

桜新町商店街は、かつてはサザエさんの漫画に出てくるような日配品や雑貨を扱う店が中心であり、地味で閑静な住宅地の商店街でした。
しかし近年はしゃれた店づくりの生花店、レストラン・カフェ、ブティックなどが進出。さらに桜新町商店街振興組合が「さくらまつり」や「ねぶたまつり」などのイベントを月替わりのように年中実施し、商店街の活性化に努めていることから、現在は賑やかで華やかな商店街に生まれ変わっています。

閑静な住宅地に賑やかな商店街。このコントラストに初めて訪れた人は目を丸くすると言われています。

また桜新町駅周辺にはミシュランにも掲載されたフレンチレストランの「アンフュージョ」と「ラクレ」、ドイツパンの「ベッカライ・ブロートハイム」、スペイン・イタリア料理を織り交ぜた約30点の惣菜を品揃えした洋風惣菜店の「エプロンズ・フード・マーケット」、全国から厳選食材を取り寄せた「母屋虎幻庭(おもやこげんてい)」など、都心でもないのに名店が多いのも特徴です。
域外からの買い物客も絶えません。グルメの間では「桜新町は隠れた名店街」とも言われており、桜新町は知る人ぞ知る食文化の発信地になっているようです。

また、プラネタリウムがある世田谷区立教育センター、古民家の洋画で有名な向井潤吉の住居後を美術館にした「向井潤吉アトリエ館」、桜神宮、年末年始の世田谷ボロ市で有名なボロ市通りなど、徒歩圏内に十数か所もの趣向の異なった観光スポットが点在しているのも、意外な魅力と言えそうです。

このほか、駒沢オリンピック公園周辺はしゃれたカフェが集積しており、その集積度は「カフェ文化発信地」とされる代官山に次ぐとも言われています。
業態もセルフサービス式のカフェから昔風の純喫茶、隠れ家風のダイニングカフェ、愛犬同伴のドッグカフェ、公園を眺めて憩えるオープンカフェなど多彩です。これらのカフェ目当ての来街者も少なくないようです。

成熟した街にひかれて入居需要が高まる賃貸マンション

桜新町は駅を挟んで北と南のエリアに大別できますが、2つのエリアには異なった雰囲気の住宅地が広がっているのが特徴と言えます。

北エリアの住宅地は比較的新しく開発された新興住宅地で、「○×ニュータウン」といった趣を感じさせます。
道幅が広く整然とした清潔感ある街並みが続き、敷地面積約2万㎡、総戸数359戸の「ラ・コルダ弦巻」をはじめ大型高級マンションも数多く建っており、年々人口が増加しているエリアでもあります。

これに対して南エリアの住宅地は歴史が古く、元々は1912年(明治45年)から1913年(大正2年)にかけ、東京信託(日本不動産の前身)が関東初の別荘用地「桜新町分譲地」として開発したエリアです。
分譲が開始されると「東京の軽井沢」と呼ばれ、人気を集めました。この時、分譲地内に植樹された桜が現在の立派な桜並木に成長し、街のシンボルの1つになっています。
桜新町の町名もこの桜並木に由来しています。1968年の住居表示実施の際、世田谷新町の一部が分離し、現在の町域が生まれたため、旧新町に桜並木の「桜」を冠して「桜新町」となったのでした。

分譲当初は開発計画通り別荘地として購入されていたようですが、1923年(大正12年)の関東大震災で都心の自宅を焼失した富裕層などが桜新町分譲地を購入して自宅を再建したことから、桜新町分譲地は別荘地から住宅地に変わったと言われています。

また当時は300~1000坪の広い区画で分譲されたため、それが邸宅と呼ぶに相応しい広壮な戸建て住宅となって現在も数多く残り、ゆとりを感じさせる成熟した住宅街を形成しています。
マンションも低層タイプが大半で、街の景観を守るために住民と不動産デベロッパとが合意したとも言われています。

「古さと新しさが調和した街」とも言われる桜新町は電車で渋谷まで9分、二子玉川まで4分、新宿と大手町まで約30分と、交通アクセスも至便です。 近年は街の魅力の認知度も高まり、一般には「交通の便利な高級住宅地」のイメージが定着しつつあるため、家賃相場は高そうに思われています。
しかし類似条件を備えた街と比べると割安感があるのも 、住宅市場的な意外性と言えるでしょう。
桜新町商店街から南へ徒歩15ほどの場所に日本体育大学世田谷キャンパスがあるため、桜新町には学生向けの下宿や賃貸マンションが多数あります。家賃相場の割安感はその影響とも言われています。

実際、不動産投資情報サイト「HOME’S」の調査によれば、賃貸マンション家賃相場はワンルームマンションが7.7万円、1DKが8.7万円、2DKが12.1万円、2LDKが17.5万円などとなっています。
入居需要が多いワンルームマンションの場合は、桜新町と立地条件が似ている三軒茶屋(9.0万円)や駒沢大学(8.7万円)より割安です。コンパクトタイプやファミリータイプも同様と言えます。

桜新町は、食文化、カフェ文化、スポットなどの街の意外性と成熟した住宅街がある南エリアの雰囲気にひかれ、今後ますます単身者と夫婦世帯を中心とした域外からの人口流入が加速することが予想されます。
新築や築浅マンションな ら相場よりもやや高めの家賃設定でも入居募集に困らないとされ、桜新町で不動産投資をするなら、ワンルームから2DKクラスの物件が狙い目と言えそうです。
このように入居希望者の需要が高く、強気の家賃設定でも空室率を抑えられるようなエリアでこそ、不動産投資の成果を緻密に分析することが重要です。
弊社が行っている金融工学的評価計算のように、資産を増幅させる最も効率的な方法を探ることができれば、複数の投資パターンから不動産投資の目的に沿った戦略を選択することが可能になります。
桜新町のように収益物件の選定が収益率をより一層高められる地域でこそ、投資の評価計算とリスクマネジメントが真価を発揮することでしょう。