自由が丘駅周辺の不動産投資市況

東急東横線と東急大井町線が交わる好立地にあり、「住みたい街ランキング」の常連として知られる自由が丘の不動産市況について解説します。


目黒区の品格を代表する街、自由が丘

東急東横線・大井町線が乗り入れる自由が丘駅。東急東横線の特急で渋谷駅まで約9分、横浜駅まで約17分。アクセスの良さから「住みたい街」の人気エリアの1つになっていると同時に「目黒区の品格を代表する街」としても知られています。

街の名前の由来は自由主義教育を掲げる手塚岸衛が1930年(昭和5年)、現在の自由が丘2丁目に自由教育の実践の場として創立した「自由ケ丘学園」から来ています。
当時の自由が丘は荏原郡碑衾町と呼ばれた農村地域でした(1932年に目黒町と碑衾町が合併して東京市に編入、「東京市目黒区」に)が、自由ケ丘学園のモダンな学風に惹かれた文化人が競って学園の周りに邸宅を構えたことから、品格のある街並みが形成されていったと言われています。
具体的には、我が国モダンダンスの先駆者とされる石井漠、小説家の石川達三や石坂洋次郎、随筆家の渋沢秀雄、作曲家の山田耕筰や伊福部昭、画家の小糸源太郎や宮本三郎、彫刻家の岡本太郎、写真家の金丸重嶺などそうそうたる文化人が移り住み、互いに交流し、俗に「自由ケ丘サロン」と呼ばれる当時の先進的文化発信拠点になりました。
そして目黒区誕生と時を同じくした1932年の東急東横線の全線開通により街の本格的な発展が始まり、翌年、駅前で創業した洋菓子店「モンブラン」により「モダンで品格のある街」のイメージが定着していったとも言われています。

現在の自由が丘の魅力は、駅周辺の商業地に洋菓子店、インテリアショップ、アクセサリーショップ、ファッションショップ、雑貨店、美容室、ネイルサロンなど様々な専門店が適度な距離感で集積していることだと言われています。
しかも駅前中央会、南口商店会など12の商店街もあり、合わせて約1300軒の専門店が営業する国内最大規模の商店街を形成しています。大半がオーナー経営であるがゆえに、一軒一軒が「庶民の手が届く上質な商品提供」を目指した個性溢れる店作りに取り組んでいます。それが「モダンで品格のある街」をバラエティ豊かにしているようです。
「モダンで品格のある街」のイメージから、外部からは堅苦しいイメージを抱かれがちですが、実際の自由が丘にあるのは、身の丈にあった「モダンな品格感」。華美でも成金趣味でもなく「こんなお洒落なモノが身近にあったらいいな」が凝縮している街でもあるようです。

こうした上質な活気が溢れる賑やかな商業地を抜けると、そこは緑豊かな庭木に囲まれた戸建て住宅やマンションが建ち並ぶ閑静な住宅地。住宅地の近くに騒音源となる産業道路がないので、住宅地全体のグレードが必然的に高まっているようです。この住宅地には成城石井、ピーコックストア、文化堂などの有名食品スーパーが点在しているのも特徴です。

街の魅力を引き立てるユニークなショッピングモールが3カ所も

自由が丘の魅力を語る上で欠かせないのが、次の3カ所のショッピングモールと無料巡回バスと言われています。

●「ラ・ヴィータ」
施設内にオープンテラスや水路があるラ・ヴィータは、ベネチアの街並みを模したショッピングモールです。水路には橋が架かり、ゴンドラも浮かんでいます。モール内にはファッション・雑貨関連の専門店、美容室など洒落た店が軒を並べています。

●「トレインチ自由が丘」
再開発により2006年に開業したショッピングモールです。モール名のトレインチ(鉄道の家)は再開発に由来しています。モール内にはベーカリーカフェ、フレンチトースト専門店、食品のドイツ式量り売り専門店、輸入雑貨専門店、紅茶・雑貨・絵本専門店などユニークな専門店13店が軒を並べ、通常のショッピングモールでは味わえない独特の雰囲気を醸し出しています。

●「自由が丘スイーツフォレスト」
日本初の「洋菓子のテーマパーク」として2003年に開業したショッピングモールです。有名店8店が味を競い、各店の看板パティシエが腕によりをかけた作り立て・焼き立ての洋菓子をその場で食べ比べることができる場として、若い女性を中心に人気を集めています。

●無料巡回バス「サンクスネイチャーバス」
1997年に運行を開始した27人乗りのマイクロバス。街の振興を図る地元有志が集まり、地元の商店、企業、個人から募った協賛金や会費で事業を運営しているのが特徴です。無料巡回バスの運行開始以降、街中への車両乗り入れが激減したため交通事故と排気ガスも激減し、自由が丘を従来にも増して喧騒感のない落ち着いた街にしたと言われています。また燃料には軽油の代わりに家庭の使用済みてんぷら油のリサイクル燃料を使っており、2008年には目黒区の「エコ・チャレンジ顕彰」を受賞しています。 こうしたエコ意識の高い住民が多いせいか、商業地の店舗も住宅地の住宅も緑と花で囲まれているところが多く、これも自由が丘の美しい景観形成要因になっているようです。

加えて目黒区は2005年から2010年まで、自由が丘をさらに住みやすい街にしようと駅舎のバリアフリー化、駅周辺の駐輪場整備などを5カ年計画で実施しました。その結果、2012年には国土交通省の「都市景観大賞 都市空間部門」で大賞を受賞、自由が丘の景観は都市景観の全国的なモデルの1つともなっています。

入居ニーズが高い高年収の単身・夫婦共働き世帯

自由が丘は「便利さ、街のバラエティの豊かさ、上質な街の雰囲気・景観」の三拍子が揃っているだけに、それを反映して家賃相場も高めです。
不動産投資情報サイト「HOME‘S」の調査によれば、自由が丘駅周辺のマンション、アパート、戸建て住宅全般の平均家賃相場は9.5万円。近隣の都立大学駅周辺(9.0万円)、田園調布駅周辺(7.9万円)と比べても若干高めです。

賃貸マンション入居者の間取りニーズはワンルームマンションː69.5%、1LDK/2DKː20.5%、2LDK/3DKː6.9%、3LDKː2.6%、その他ː0.5%となっています。この間取りニーズからは単身者の賃貸マンション需要の高さがうかがえます。立地条件と街の特徴から「IT系、クリエイティブ系、学術系の中で比較的年収が高い単身世帯と夫婦共働き世帯の入居ニーズが高い」(不動産業界関係者)と言われています。

一方、間取りタイプ別家賃相場は、駅から徒歩10分以内の物件はワンルームマンションː9.0万円、1DKː12.6万円、1LDKː16.5万円、2DKː13.3万円、2LDKː19.8万円、3LDKː27.2万円などとなっています。同10分以上の物件はワンルームマンションː7.9万円、1DKː10.1万円、1LDKː14.4万円、2DKː12.0万円、2LDKː18.5万円、3LDKː24.6万円などとなっています。

自由が丘エリアは一戸建て中心の住宅地としてマンションの建築規制が厳しいため、分譲マンションが非常に希少とされています。賃貸用の単身者向けマンションであっても新築は数が限られるため、物件選びは注意が必要となるでしょう。

このように自由が丘の賃貸マンションでは、比較的良質な入居者が獲得できそうです。一方で、入居者のグレードが高いだけに物件や管理は厳しく評価されます。弊社では入居促進、物件メンテナンスを行うことでオーナー様のキャッシュフローを最大化させられるプロパティマネジメントを推進しています。自由が丘のような人気エリアでこそ、適正な市況分析と賃料設定ができるかどうかの差が収益の大きな違いとして現れることでしょう。