城南地区の不動産投資市況

城南エリアは品川区、大田区、目黒区の3区からなるエリアです。東京都南部に位置し、大田区及び品川区は東京湾に面しています。
しかしその一方、目黒区及び大田区北部には武蔵野台地の東南端にあたる高台があり、東京屈指の高級住宅街として知られる田園調布、久が原、山王、自由が丘、目黒、青葉台、そして品川区の東五反田などが集中しています。
このように多様性に富み、また東京五輪関連の再開発で大きな注目を集めている城南エリアの不動産投資市場について解説します。


「製造業の中心」からのパラダイムシフト

城南エリアの大田区や品川区は東京港、羽田空港などの物流機能を活用しやすい地理的条件や、大田区から神奈川県横浜市方面へ延びる京浜工業地帯の一角を占めるなど、長らく東京都の製造業の中心的役割を果たしてきました。このため賃貸住宅需要も製造業関連の従業員が多いなど、城南エリア全体のエリアブランドとしての価値はそれほど高くないイメージがあります。しかし、冒頭でも述べたように、エリアの北側の高台に目を向けると東京屈指の高級住宅街が点在しています。
また、日本の産業構造が大きく変化し、かつて「重厚長大産業」(重化学工業などの産業)の代名詞であった京浜工業地帯は、2000年頃を境に、医療や環境分野などのハイテク産業の最先端技術研究拠点へと変貌し、住環境も一変しています。こうして空気や海、緑の美しさが目立つ良好な住環境と住職近接とが両立するようになったことから住宅需要が伸び、不動産投資家にとって魅力的なエリアとなりました。

東京五輪が城南エリアの不動産投資市況に与える影響は?

2020年の東京五輪でメイン会場となるのは新宿区霞ヶ丘町ですが、競技場は有明・お台場・夢の島・海の森などの「東京ベイゾーン」を中心とした都心各地に分散しています。 品川区では潮風公園(ビーチバレー)が、大田区では大井ホッケー競技場(ホッケー)が競技場として使用される予定ですが、これらの施設は既存のものを使うため、江東区などのように仮設施設の跡地を利用した大規模再開発が行われる予定はありません。

しかしその一方で、東京五輪を契機に一層の国際化を目指す東京都は、大田区と品川区を、「首都圏環状メガロポリス構想」の最重要地点である「東京湾ウォーターフロント都市軸」と位置づけています。
具体的には、まず、羽田空港の国際拠点空港化によって発生する空港跡地の活用について、国土交通省、東京都、大田区、品川区が協議しており、空港跡地を3ゾーンに区分して、
・市街地近接ゾーン……文化交流機能、産業支援機能
・国際線地区隣接ゾーン……国際交流機能、商業機能
・B滑走路隣接ゾーン……空港連携機能
のように、機能集約して開発を進める予定となっています。

また、東京五輪に合わせて開業予定の山手線新駅、東京五輪の7年後の開業を目指すリニア新幹線の起点となるリニア新幹線品川駅など、東京五輪に的を絞った一過性の不動産需要に依らず、さらにその将来を見据えた長期的な発展が期待できるのが城南エリアの大きな魅力です。
特に、品川駅周辺は国家戦略特別区域として、東京五輪を契機に新たな国際交流拠点「グローバル ゲートウェイ 品川」として成長を続ける街となりそうです。

一方、大崎駅周辺では2016年1月に「西品川一丁目地区第一種市街地再開発事業」がスタートしました。オフィス中心のA街区、住宅中心のB街区、そして両街区を結ぶ緑地公園で構成される予定です。
延床面積約22万平米総事業費約1346億円という巨大プロジェクトで、ソニー本社跡地などを再開発した「御殿山プロジェクト」をしのぐ規模となります。

大規模再開発で次々と新しい街が誕生する城南エリア。不動産投資の対象としてはもってこいのエリアと言えるのではないでしょうか。

首都圏の人の流れが変わる

羽田空港の国際化にともない「国際競争力の強化に欠かせない」と重要性が指摘される「新空港線(いわゆる蒲蒲線)」の開通も、城南エリアの不動産価値に大きな影響を与えることが予想されます。
新空港線は、JR・東急蒲田駅と京急蒲田駅を地下で結ぶわずか800mの路線に過ぎませんが、新空港線の開通により京浜東北線、東急池上線、東急多摩川線からダイレクトに羽田空港へアクセスできるようになります。田園調布や洗足池といった高級住宅地から羽田空港への移動も楽になり、東急両線沿線に点在する住宅地の不動産価値は大幅な上昇が期待されます。

再評価される伝統のブランド

城南エリアの魅力は、ここまで説明してきた交通インフラ整備や都市開発によって人気の高まった新興住宅地だけにとどまりません。「住みたい街ランキング」上位の常連である中目黒、自由が丘、恵比寿といった「エリアブランドの老舗」的な住宅地の人気も健在です。

例えば中目黒です。渋谷や代官山から至近距離にあり、東急東横線、日比谷線の2線が利用できる交通アクセスに加え、大規模商業施設や商店街、公共施設などが充実しています。こうした「住宅地としての実用性」が高いエリアは、めったなことでは価値が下がりません。それに加えて街の品格が洗練されており、昔からの地域住民がそうした伝統をしっかり守っている点も近年高く評価されるようになりました。

このような点は自由が丘や恵比寿にも共通しています。「街の品格」や「雰囲気」といったものは地域住民が長年かかってつくりあげた無形の文化であり、新興住宅地が簡単に真似できるものではありません。こうした点から、城南エリアの高級住宅地や人気住宅地の不動産価値は簡単に下がることがないのです。

不動産投資の「主目的」によって適切な地区選定を

不動産情報サイト「HOME’S」の調査によれば、城南エリア各区の不動産投資市況は次のようになっています(比較は駅徒歩10分以内 ワンルーム/2DK/3DKで比較、単位は円)。

・品川区 … 88,000/125,300/161,700
全体的に家賃相場は上昇傾向にありますが、20平米クラスの物件に特に人気が集中しており、1LDK~2DKの家賃相場の上昇幅が著しくなっています。

・大田区 … 72,000/105,400/131,400
全般的に賃料相場は安定していますが、2LDK以上の家賃相場がやや下降気味です。

・目黒区 … 95,600/133,300/153,000
全般的に家賃相場は落ち着いていますが、東京都の平均よりかなり高めです。また、25平米以上の専有面積を持つ物件が人気です。

ここまで解説してきたとおり、城南エリアは、一気に注目を浴び地価が上昇した新興住宅地から、東京を代表する格の高い高級住宅地まで、幅広い選択肢があります。利回りに注目して資産形成を狙うのか、それとも不動産資産の長期安定的な保有がしたいのかによって、ターゲットとするべき地域は大きく異なります。
これから東京五輪に向けて、全般的にマンションの資産価値も上昇していくものと思われますが、「五輪の先の10年」を見据えた不動産投資をするかどうかが物件選びのポイントとなるでしょう。このような選択肢と投資戦略の自由度が高いエリアにおいては、投資目的の明確化と入念な投資シミュレーションが価値を発揮します。弊社の金融工学的評価計算を活用して、安全性の高い投資戦略を一緒に考えてみてはいかがでしょうか。