2015年9月「住みたい街」調査結果の動向を見る

不動産を探す人達はもちろん、不動産投資家にとっても注目の「住みたい街」調査。2015年9月は常に1位をキープし続けていた「吉祥寺」が2位に落ちるという意外な結果が出ました。 首都圏で人気を集める「住みたい街」がなぜ変化したのか? 購入者のニーズはどのように変わりつつあるのか? その実態に迫ります。


「吉祥寺」、「恵比寿」の順位がついに入れ替わる

「住みたい街は吉祥寺が1位」。

これが従来の「住みたい街ランキング」のいわば常識でした。ところが今年9月、不動産大手7社共同の新築マンション情報サイト「メジャーセブン」が発表した「マンション購入意向者に聞く、住んでみたい街アンケート2015年度」では、首都圏では1位「恵比寿駅」、2位「吉祥寺駅」、3位「麻生十番駅」と意外な結果となり、話題を集めています。

調査は消費者側のマンショントレンドを把握するため2005年から毎年実施しているものです。不動産大手7社の新築マンション購入意向のインターネット会員(2015年7月現在約72万人)を対象にアンケートを行い、その結果を公表しています。今回、調査開始以来恵比寿駅が初めてトップに躍り出ました。

いったい何があったのでしょうか。

調査によると、「住んでみたい街」を選択した理由をベスト6の街ごとに見ると、恵比寿駅(1位)、表参道駅(4位)、自由が丘駅(5位)は「交通の便が良い、おしゃれ」、2位の吉祥寺駅は「公園が多い、商業施設が充実している」、3位の麻布十番駅は「高級感、ステータス感」、6位の鎌倉駅は「歴史がある、海に近い」といった理由で上位に挙がっています。

この調査結果に関してニュース・情報配信サイト「NEWSポストセブン」は10月7日付で「(20位までに)ランクインした都心エリアは、いずれも大手デベロッパーが大規模なタワーマンションなどを手がけている地域なので自然と注目度は高いといえる。また、表参道や南青山周辺で今年引き渡された新築分譲マンションは、地価上昇に伴いほとんどの物件が1割以上値上がりしている。その意味で人気エリアは住みやすさよりも資産価値で評価されているといってもよい」との、住宅ジャーナリストの山下和之氏の見解を紹介しています。

メジャーセブンの今回の調査結果や山下氏の見解を重ね合わせると、交通の便、商業施設の充実、再開発による都市リニューアル、資産価値などが人気エリアの条件になっている様子です。


人気の高い街の共通点は?

この傾向は住宅・不動産購入情報サイト「スーモ」が、今年4月に発表した「住みたい街ランキング2015関東」の調査結果からも読み取れます。

総合ランキングのベスト2は例年通り吉祥寺(1位)と恵比寿(2位)が不動でしたが、3位以下では目黒(4位)、武蔵小杉(5位)がベスト5にランク入りするなど、人気エリアの入れ替わりがみられました。

吉祥寺と恵比寿の順位は3年連続で同じでしたが、特に吉祥寺はシングル総合、DINKS(共働きの夫婦のみの世帯)総合、ファミリー総合の世代別ランキングでもそれぞれ1位を獲得。世代を問わない圧倒的な人気ぶりを示しました。

これをもう少し細かく見ると、シングルの場合は池袋(3位)、新宿(4位)、渋谷(6位)など、大きな繁華街がある街の人気が高く、生活に刺激や楽しさを求めている傾向が窺えます。

DINKSの場合は鎌倉(9位)、中野(10位)がベスト10入りしています。そのうち男性は武蔵小杉(3位)、品川(6位)など都市再開発で注目の街の人気が高く、将来性や資産価値に着目している傾向が窺えます。

ファミリーの場合は二子玉川(8位)、鎌倉(10位)、たまプラーザ(同率10位)、大宮(同率10位)など郊外の街が人気です。「都心にこだわらず環境やコスト感のバランスを重視する、ファミリーならではの特色が出ていると言えそう」と調査では分析しています。

全体的に見ると、順位の上下変動はあるものの、ベスト10の街自体は昨年調査とほとんど変わらず、首都圏の街の安定した人気ぶりが目立っています。

メジャーセブンとスーモのランキング上位には、2020年の東京五輪開催に向けた大規模都市再開発地区を抱えている街が多く入っています。このことから「人気が高い街は商業施設が充実しているなど利便性が高く、資産価値も高い」という共通項が浮かび上がってきます。