外国政府系投資ファンド「GPF-G」の日本不動産市場投資参入の狙いは?

今や世界的にも注目される投資市場である東京には、国内各地だけでなく、海外からも様々なアクターが市場への参入を見せています。 その中でも「GPF-G(ノルウェー政府年金基金-グローバル)」の東京オフィス市場への進出は注目すべき画期と言えるでしょう。 外資ファンドの進出による市場への影響、今後の東京不動産投資市場の展望について解説します。


政府系ファンドの東京オフィスビル市場への進出が話題に

世界最大級の政府系ファンド「GPF-G(ノルウェー政府年金基金—グローバル)」の東京オフィス市場進出が話題になっています。

この話は今年に入ってから、経済・金融情報配信サービスのブルームバーグ日本版などがその動き(「ノルウェー政府、東京オフィス年内開設」6月23日付)を伝えていましたが、10月8日に日本経済新聞が「約100兆円の資産を有する世界最大の政府系ファンド、ノルウェー政府年金基金が日本で不動産投資を始める。投資額は数千億円になる可能性。不動産投資の事務所を都内に近く開く」と報道したことから、東京オフィスビル進出の話題が現実味を帯びてきました。

GPF-Gはノルウェー政府が北海油田の石油収入の運用を図るため1990年に設立した政府系投資ファンドです。基金はノルウェー政府財務省が所有し、ノルウェー中央銀行投資管理部門が運用しています。

日本の政府系投資ファンド「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」によると、2015年3月末現在のGPF-Gの運用資産規模は約104兆円(GPIFは約138兆円)、基本ポートフォリオは債権35%、株式60%、不動産上限5%(GPIFは債権と株式が半々)などとなっています。

運用資産規模が10兆円を超える海外の大型年金基金には不動産投資を積極的に行っている基金が少なくありません。

世界上位20基金の中にはCalPERS (カリフォルニア州退職年金基金)を始め米国の公務員年金が5基金あり、これらの基金は古くから不動産投資を行っています。またオランダのABP(公務員年金基金)は国際的な不動産機関投資家として知られています。

そうした中で、近年になって不動産投資額を急増させているのがGPF-GとCPP(カナダ国民年金基金)といわれています。両年金は米国やオランダの大型年金と比べると不動産投資が後発のためか、日本の不動産業界ではあまりよく知られていません。


GPF-G(ノルウェー政府年金基金—グローバル)とは? その狙いは

そんな中、日本経済新聞などの報道で東京オフィス市場進出の可能性が強まってきたGPF-Gはどんな投資ファンドなのでしょうか。そして、東京進出の狙いは何なのでしょうか。

GPF-Gのプロフィールに関しては、例えばニッセイ基礎研究所の「不動産投資レポート」が「海外大型年金の不動産投資パフォーマンスと投資行動」(2015年4月28日付)の記事の中で、次のように紹介しています。

●2014 年のGPF-G年次報告書によれば、不動産のベンチマーク(投資基準)はまだ定めていない。理由として、不動産ポートフォリオはいまだ構築の途上であり、不動産投資は2011年から開始したばかりであることを挙げている。

●GPF-Gを除く各基金は運用資産全体のリターン水準を定めているが、GPF-Gはそれを示していない。GPF-Gは将来予想される公的年金コストの増加に備えて政府収入を貯蓄する役割も担っているが、将来の年金コストを賄うためにいつ、この基金を使うかについての政治的決断もまだなされていないという。したがって年金給付を考慮したリターン設定は行われていないと考えられる。また、石油価格が下落した場合やノルウェー経済が収縮した場合等の財政課題に対処するためのツールとして財務省が所有していることから、比較的リスクを抑えた運用が行われている。

●GPF-Gの不動産投資は、現状ではあらかじめ選定したニューヨーク、ワシントンDC、ロンドンなど欧米主要都市のオフィスや物流施設に限定されている(ただし、2015年からアジアへの投資を開始するとしている)。2014年後半からは米国不動産ポートフォリオを構築中で、米国での不動産投資を活発化させている。

このGPF-Gが近々東京オフィス市場に進出するというわけですが、同基金は東京オフィス市場を橋頭堡にアジアの不動産市場進出を計画しているようです。ただ同基金に対する情報は少なく、メディアの報道も限られているため、現時点で同基金の東京オフィス市場進出の真意や影響度は不明で、これから明らかになると思われます。

しかし、このレポートから推察すると、GPF-Gの日本進出には、円安で東京オフィス市場に買い時感が出ていることも影響していると考えられます。また海外マネーの流入は長期運用に適していると判断できる東京オフィスビルの不動産市況は活性化しているともいえるでしょう。