「住みたい街」ランキングでは分からない投資エリア選び

不動産情報サイト「HOME’S」を運営するネクストが2016年2月に発表したアンケート調査『2016年版「買って住みたい街」「借りて住みたい街」ランキング』が話題になっています。
しかし人気投票による「住みたい街」と実需的な「住みやすさ」はやや異なり、入居需要は「聞くと見るとでは大違い」のケースもあります。投資エリア選びのポイントは何でしょうか。


交通・生活の利便性の高さと住みやすさは別

今回の『「買って住みたい街」ランキング』で1位を獲得したのは昨年の調査に引き続き吉祥寺。次いで横浜、恵比寿の順でベスト3となりました。
この結果について同調査は次のように分析しています(概略)。

●1位 吉祥寺
「何でも物が揃い、交通の便もいい。また、この街に住みたいランキングといったものに上位ランクされているのも理由の1つ(20代・男性/学生)」、「人気度が高い(30代・男性/会社経営)」など、毎年ランキング上位に登場すること自体が吉祥寺の求心力になりつつあるようでした。
交通と生活の利便性、自然環境など居住エリアとしてのバランスの良さを評価する声が多くあります。

●2位 横浜
「海やベイブリッジがベランダから見える(40代・男性/会社員)」、「都会でありながら、何となく地方的なところがある港町(60代・男性/無職)」、「海も近くて都心にも出やすい。ネームバリューがある(20代・男性/会社員)」など、都内の湾岸エリアとは異なる歴史的な景観や落ち着いた街並み、吉祥寺同様に知名度が高いことなどが評価されています。

●3位 恵比寿
「街の知名度が高く、人気がある。住むことのステータスがある(40代・男性/会社員)」、「将来にわたって住宅の資産価値が高そう(40代・男性/会社員)」など、住環境とエリア特性としての人気=資産価値に言及する回答者が多くありました。

続いて『「借りて住みたい街」ランキング』ですが、こちらでも1位を吉祥寺が獲得し「買って住みたい街」とともに2冠を達成。買うにも借りるにも首都圏で最も人気が高い街となりました。
次いで恵比寿、横浜の順でベスト3となり、「借りて住みたい街」では順位が入れ替わっただけの結果となりました。 これについて同調査は次のように分析しています(概略)。

●1位 吉祥寺
「店の種類が多く、基本的にここですべて間に合う(40代・男性/会社員)」、「おしゃれな店が沢山あって飽きることもなく楽しい毎日が送れる。日用品や雑貨や洋服も困ることもないし、井の頭公園や映画館、駅ビルなど娯楽もある(30代・女性/主婦)」、「住みたい街ナンバーワンだから(30代・女性/無職)」など、地元で何でも揃う生活利便性と娯楽施設が整い、常に住みたい街としての人気を維持し続けていることで求心力が一層高まっていることが分かります。

●2位 恵比寿
「人生のモチベーションが上がる(30代・男性/会社経営)」、「一種のステータス(20代・女性/会社員)」など、人気が高いこと自体を理由として挙げる回答が見受けられる一方で、「遅くまで開いている個性的な飲食店が多くアートを扱う面白い店も多い(60代・女性/会社経営)」のように、街の個性と生活を楽しむことを重視する回答も数多く寄せられました。

●3位 横浜
東京に次ぐ大規模な事業集積地であること、および港町としてのイメージを好意的に評価する声だけでなく、実際の交通利便性と生活利便性についても高く評価されています。
また「都内にも近いし箱根、熱海にも近い(40代・女性/会社員)」、「都心へのアクセスのよい海の街(30代・女性/会社員)」、「横浜っていうだけでおしゃれなイメージ(20代・女性/学生)」など、女性からの好意的な回答が多いのも特徴として挙げられます。

アンケート調査という、回答者がイメージを膨らませた「住みたい」人気と、実際の「住みやすさ」にはいささかのギャップがあるようです。
これに関連して、「住まいと街の解説者」の中川寛子氏は『HOME’S PRESS』の「<暮らしに合わせて選ぶ、街×住まい 番外編>人気の街ランキングの読み方」の中で、次のように指摘しています(概略)。

「足回り、買い物などの生活利便性、井の頭公園などの独特の雰囲気で人気の吉祥寺だが、家賃は高くかつ駅周辺の物件は少ない。人出が多く、いつもざわざわしている点はメリットでもあり、デメリットでもある。現実的な暮らしを考えると、シングルには物価も安い高円寺のほうがお勧めだし、共働きならスーパーなどが多い中野もいい。遊びに行って楽しい街が住んで楽しいとイコールでない点は、こうしたランキングを見る時に大事にしたい視点である」


人気が高くても実需がなければ不動産投資は成り立たない

では賃貸マンションなど不動産投資を行う際において、エリア選びのポイントは何でしょうか。
不動産投資のエリア選びで心得るべきは「街の人気がいくら高くても、実需がなければ不動産投資は成り立たない」ということでしょう。
そのためには、実需のあるエリアを見極めるスキルを身に着けることが重要といわれています。そのポイントして次の2点が挙げられます。

●利回りは物件選びの目安にならない
街の人気が高いエリアで、表面利回りが高い物件でも入居者がいなければ賃貸経営は成り立ちません。そのために重要なのが人口推移に基づく実需の把握といえます。
例えば、東京都の「東京都の人口(推計)」によると、人口の最も多い区は世田谷区で2016年1月1日現在の総人口は90万8325人。前年1月1日の総人口は87万4332人だったので、1年間で3万3903人増加しています。増加率は前年比3.9%にも達しています。
この人口急増は、世田谷区には桜新町、三軒茶屋、駒沢などもともと居住需要が高い街が多いのに加え、二子玉川の影響が大きいといわれています。

それは、二子玉川駅周辺で行われた都市再開発の完了により二子玉川の都市機能が充実し、豊かな自然環境と相まって従来にも増して住みやすい街に発展したことが、これだけの人口流入をもらしたと見られているからです。
二子玉川は今後も人口増加が予測される街であるため、不動産投資先として注目されるエリアの1つです。

●街の将来性を把握 「街の将来性」を予測するのも投資エリア選びの重要なポイントといわれています。再開発エリアに着目した不動産投資が活発なのはこのためです。

例えば東京都の場合2015年7月末現在、都内219地区で市街地再開発事業が進行中または計画中で、事業終了後は居住環境の飛躍的な向上が見込まれています。当然、域外からの居住者流入が加速し、地価の上昇も予測されています。

実需の把握にしろ、街の将来性把握にしろ、それだけでは実効的なエリア選びは困難といえます。現実の投資では実需と街の将来性に基づいた、消費者の家探し行動の分析や収益性シミュレーションがエリア選びの最終的な判断基準になるからです。

しかし、これは個人投資家独りの努力では困難でしょう。そのため、こうした専門スキルを持つ不動産投資サービス会社をいかにして見つけ、パートナー関係を築くかが最重要ポイントといえるでしょう。