不動産投資が城東エリアへ傾斜する理由

近年、不動産投資家の間で台東区、墨田区、江東区など城東7区の収益物件に投資する傾向が強まっています。交通インフラが整っていて通勤・通学に便利な上、医療機関、商業施設、娯楽施設、飲食店など多様な都市機能がすでに整備されているため住みやすく、都心3区と同様に人口増が続いているためです。また2012年に登場した東京スカイツリーを目当てに、インバウンド需要や観光客からの注目を集めてきた下町エリアであると同時に加えて、城東エリアの物件価格は都心エリアと比べて低く、購入しやすい点も投資意欲を刺激しているようです。


個人投資家の投資意欲を引き付ける城東エリアの物件価格

不動産データサービスの東京カンテイが2016年1月21日に発表した「三大都市圏・主要都市別中古マンション70㎡価格月別推移」によれば、「2015年12月現在の首都圏中古マンション平均価格は前月比0.2%減の3269万円となり、連続上昇は15カ月でストップした。しかし都県別で見ると、18カ月連続で上昇した東京都(前月比1.6%増、4623万円)を筆頭に神奈川県、埼玉県、千葉県の3県も前月比0.2-0.5%の微増となっており、11月同様に価格推移自体に陰りは見られない」としています。
そこで、東京都の価格推移を行政区別に見れば、「都心6区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区、文京区)の平均価格は前月比1.2%増の7143万円と7カ月連続の上昇で、中でも千代田区は上値だった9000万円を再び突破して9286万円まで付けた。城南・城西6区、城東・城北11区の周辺エリアでも平均0.2~0.3%の微増で依然として強含みが続いている」としています。

2015年12月現在の城東・城北11区の平均価格は3853万円。これは都心6区の53.9%、城南・城西6区の75.3%という低さです。都心エリアや城南・城西エリアとの価格差が大きいので、ある不動産投資関係者は「人口増や都市機能充実度を尺度にしたマンション需要を計れば、城東・城北エリアの平均価格は東京23区内で最も伸び代がある。今購入しておけば数年後には価格が上昇する可能性が極めて高く、出口戦略向けの物件としても狙い目」と指摘しています。

一方、東京都総務局の「東京都男女年齢別人口の予測」(2013年3月25日)によれば、2011~2035年の25年間における人口増減数は、例えば江東区が約3万1000人増となるなど城東7区は都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区)と同じく人口増が予測されるエリアになっています。


築10年未満の優良マンションストックが城東エリアで増加の一途

では、不動産投資の資源であるマンションストックはどうなっているのでしょうか。これに関して東京カンテイが2013年10月30日に「晴海から半径8㎞圏内の分譲マンション」と題する興味深い調査結果を発表しています。
それによると「晴海から半径8㎞圏内で2013年8月末現在までに竣工した分譲マンションは1万195物件・54万57戸で、東京23区全体の2万8940物件・133万3018戸に対して物件数で35.2%、戸数で40.5%のシェアを占めている。今後も湾岸地区では判明しているだけで約1万戸の新規供給が計画されている」と述べ、晴海から半径8㎞圏内の限られたエリアに東京23区のマンションストックの4割が集中している事実を明らかにしています。

同調査はさらに年代ごとの行政区別シェア推移を分析、その特徴を次のように指摘しています。

●1982年以前の竣工物件(築31年以上)
この年代は港区(シェア22.3%)、渋谷区(同14.0%)、品川区(12.7%)の上位3区だけでマンションストックの5割近くを占めている。この年代は都心エリアに高額物件マンションが集中している。

●1983-2002年の竣工物件(築11-30年)
この年代のシェア上位3位は品川区(15.8%)、港区(13.5%)、江東区(11.4%)。上位3区のシェアは4割強に低下している。しかし、3位の江東区、8位の台東区、9位の墨田区など城東エリアのシェアが1982年以前より拡大しており、都心エリアから城東エリアへの立地シフトが進んでいる。

●2003年以降の竣工物件(築10年未満)
湾岸地区へのマンション供給集中を背景に、江東区、中央区、品川区、港区と東京湾に面した4区が上位を独占し、城東エリアの墨田区と台東区も1983~2002年代よりもシェアを拡大しており、湾岸地区だけではなく城東エリアへの立地シフトも同時に進行している。また、港区の場合は、赤坂や六本木の都心ではなく晴海、汐留、芝浦などの湾岸に大規模マンション供給が集中し、港区内での立地格差が鮮明化している。

この調査結果はコストパフォーマンスが高く、したがって需要が最も多い築10年未満の優良マンションストックが城東エリアで増加し続けている事実を示していると言えます。


歳月をかけて街の機能が蓄積されてきた城東エリア。

かつてのニュータウンのように住宅と日常生活に必要な最低限の買い物ができる商店があるだけの単一機能の街では、マンションが機能を果たしにくくなっています。
現在のマンションは、交通インフラが整っていて、医療機関、商業施設、娯楽施設、飲食店など多様な都市機能が充実している街に立地していないと、新たな入居需要はないとさえ言われています。

その点、城東エリアの台東区、墨田区および江東区西部は、江戸時代に大名家の下屋敷や寺社が集中していたエリアで、街の機能を蓄積してきた歴史があります。江戸川区、葛飾区、荒川区なども戦前から工業地として発展してきたエリアで、こちらの街も前者と同様です。
防災力強化を図る東京都の都市再開発計画も各地で進んでいます。しかも都心6区と異なり工場跡地をはじめマンション用地も豊富です。
城東エリアでマンション開発が加速している背景には、こうした潜在条件が近年になってマンションの好立地として認識されたことがあるようです。

加えて城東エリアの「湾岸ゾーン」では、2020年の東京五輪開催に向け様々な国際会議やスポーツイベント開催が予定されており、これらを契機に湾岸ゾーンには約1万戸の分譲マンションが新規供給されると見込まれています。
東京スカイツリー効果で賑わう墨田区の押上・錦糸町エリアも都心へアクセスしやすい立地特性が魅力となり、近年は賃貸マンションの入居需要が増加し、不動産投資の人気スポットになっているようです。
特に押上地区は成田方面から東京駅を通過し、泉岳寺、羽田空港を結ぶ新線計画の通行ルートにもなっており、今後ますますマンション開発熱が高まると見られています。

「不動産投資をするなら城東エリア」。この流れは今後主流化すると見られています。